2018年03月07日 08時40分
映画と音楽の相互作用、時流とらえた『グレイテスト・ショーマン』ヒットの理由
2週連続で動員1位となった『グレイテスト・ショーマン』(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』が好調だ。全米でもヒットを記録した本作は、日本でも動員ランキング2週連続1位を記録(興行通信社)。さらに、主題歌や劇中歌を収録した『グレイテスト・ショーマン(オリジナル・サウンドトラック)』も、オリコン週間アルバムランキング(3/12付)で総合1位を獲得した。盛り上がりが続く映画と音楽のヒットの要因は、どこにあるのだろうか?
◆2週連続で動員1位、サントラもランキング1位を記録
『グレイテスト・ショーマン』は、アメリカでもっとも有名だったサーカスのひとつ、『リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス』(2017年に解散)の創設者の1人として知られる、フィニアス・テイラー・バーナムの半生を描いた伝記ミュージカル映画。昨年大ヒットを記録した『ラ・ラ・ランド』に続く、ハリウッドメイドのオリジナル映画として期待された今作は、全米では同じくミュージカル映画で大成功した『レ・ミゼラブル』(2012年)を上回るオープニング成績を記録。日本でも2週連続で動員ランキング1位(興行通信社)と、好成績をマークしている。
そして、映画好調を後押しするのが、同作のサウンドトラックのヒットだ。1月17日に発売された本作だが、最新のオリコン週間アルバムランキング(3/12付)では、初の総合1位を獲得。映画サウンドトラック盤の同ランキング1位は、『アナと雪の女王オリジナル・サウンドトラック』以来3年9ヵ月ぶり。実写映画サントラ盤としては、エミネム主演映画『8マイル〜ミュージック・フロム・アンド・インスパイアード・バイ・ザ・モーション・ピクチャー』以来、14年9ヵ月ぶりの快挙となった。さらに、3/12付オリコン週間デジタルアルバムランキングでも、3週連続の1位を獲得している。
◆アカデミー賞授賞式や平昌五輪でも響いた、主題歌「This Is Me」のスター性
このように、映画動員、サントラのヒットと、すべてが上手く繋がった『グレイテスト・ショーマン』。その盛り上がりの要因には、3つのポイントがある。
1つ目は、なんといっても歌曲の持つタレント性だ。本作収録のキアラ・セトルによる「ディス・イズ・ミー / This Is Me」はゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞しており、第90回アカデミー賞ではノミネートも。3月5日(日本時間)に開催されたアカデミー賞授賞式では惜しくも受賞は逃したが、キアラ・セトルは会場で歌唱パフォーマンスを披露。彼女の力強く圧倒的な歌声に会場は手拍子で応え、歌い終わると大きな拍手とスタンディングオベーションが贈られた。また、平昌五輪のフィギュアスケートのエキシビションのラストでは、男子シングルで金メダルを獲得した羽生結弦選手や銀メダルの宇野昌磨選手など、出場選手たちがこの曲をバックに一体感のあるパフォーマンスを披露し感動を呼んだ。
そんなスター性を持つ主題歌「This Is Me」をはじめとした劇中歌の多くは、一度耳にしたら離れないほどキャッチー。テレビスポットやWeb動画などで、一部を聴いただけでも魅力がわかるほどの楽曲がそろっている。実際に劇場で映画を観た人のサントラ購買意欲をくすぐるのはもちろん、リピートしてシーンの振り付けごと覚えたいという欲求にまで結びついている。これらの楽曲を手がけたのが、昨年映画もサントラも大ヒットに導いた『ラ・ラ・ランド』の音楽家チームというのも納得だろう。
◆“バブリーダンス”の登美丘高校ダンス部を起用、的確な連続プロモーション
2つ目は、お茶の間の話題性だ。公開前、本作には大がかりなプロモーションが2つ仕掛けられていた。まずは大阪府立登美丘高校ダンス部(以下登美丘)による、主題歌「This Is Me」のプロモーションビデオ。ご存じの通り、登美丘は昨年後半に“バブリーダンス”で一躍有名になり、『第68回NHK紅白歌合戦』や『第59回 輝く!日本レコード大賞』でパフォーマンスを披露したことで知られている。楽曲のメッセージ性と、「ありのままの個性を尊重する」という作品テーマに共鳴した登美丘だが、タレント性の高いうちに作品PRに参画したことで話題に。
さらにそれに追い打ちをかけたのが、主演のヒュー・ジャックマンと「This Is Me」を歌った新星キアラ・セトルの来日キャンペーンだ。テレビでの生歌披露や、プレミアイベントでの話題などが報じられると、登美丘の話題が切れる前にさらに作品の知名度を押し上げた。
◆“アナ雪”から続く音楽映画ブーム、時流をとらえた成功例に
そして3つ目は、音楽映画のブームだ。『アナと雪の女王』以降、「一緒に口ずさめて踊れる」ミュージカルや音楽のブームが続いており、動画サイトでの「踊ってみた、歌ってみた」動画の拡散によって売上に結びついた映画や楽曲が多くある。また、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』以降流行し、今年は『バーフバリ 王の凱旋』でも仕掛けられた「発声上映」や「爆音上映」などの観客参加型上映も、音楽映画にハマる企画。昨年は『ラ・ラ・ランド』がそれらニーズにバチッとハマったといえるが、『グレイテスト・ショーマン』観賞後のリアクションでも、「発声上映、シングアロング版などの企画があればいいのに」といった声が多く聞かれた。
こうして、公開前から途切れることなく話題を集めた『グレイテスト・ショーマン』は、その作品と音楽の魅力で、観客たちに「また聴きたい、歌いたい」と感じさせ、サウンドトラックの購買にも繋げた。映画と音楽の相互作用がうまく機能し、現在の時流を見事にとらえた成功例と言える。今後、前述のような観客参加型の企画上映が実現した場合は、さらなる広がりを見せることとなるだろう。
(文:よしひろまさみち)
>>歌曲の持つタレント性、お茶の間の話題性がカギに『グレイテスト・ショーマン』ヒット分析
>>自分の成長を実感!【英会話レッスン 満足度ランキング】