「食」と「医」を連動、健康への新しいアプローチ〜神戸学院大学〜

「食」と「健康」にまつわる情報は多く、「栄養学」に大きな注目が集まっています。実際に、医療の現場では、医師とともに看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師などがチームを組み、患者の診断と治療にあたっています。こうした現代の健康ニーズに応えるため、神戸学院大学では、医療の高度化に対応し、チーム医療に貢献できる人材を育成するため、栄養学部を2016年度より“管理栄養学専攻”と“生命栄養学専攻”の2専攻制に改組する。そこで、「食」と「医」に精通したスペシャリストを養成する神戸学院大学栄養学部の取り組みを取材してきました。

これからの時代の”健康”には、「食」と「医」の連動が必要!

 日々の食事で高血圧や糖尿病といった病気の予防・治療のため、医療に栄養学を連動させる考え方は、いまや当たり前。「食」と「医」の両方を学ぶことの重要性について、神戸学院大学栄養学部の池田清和学部長も「昨今の健康ブームを背景に現代ほど、栄養学が注目されている時代はないと感じています」と語ります。「食」は健康に密接に関連しているだけでなく、医療との関連もより強くなっています。

  • 神戸学院大学栄養学部 学部長 池田清和教授

 「日本は長寿大国です。その一因には、3000年におよぶ日本の食文化が結びついていると思います。長寿には、栄養学でよく言う“五味五色五法”や和食の“一汁三菜”のように、いろいろな食材を取りそろえ、美しくおいしく食べようということがすごく大事です。また、「食」は、栄養価を補うだけでなく、「食」を通したさまざまな触れ合いが、生きる喜びや楽しみにつながり、生活の質を向上させます。医療現場でも、入院中や疾病における食事療法も含め、おいしく食事をとるということは副交感神経を刺激し、治療効果をあげ、健康面の向上にもつながります」(池田先生・以下同)。

 神戸学院大学栄養学部は、栄養のプロ・管理栄養士と医療検査のプロ・臨床検査技師を育てている全国的にも珍しい学部。特に、「食」と「医」に精通した人は、医療現場からのニーズが高いようです。「本学部では、長く管理栄養士と臨床検査技師を育ててきました。今の医療現場はチーム医療が主流です。また、先ほど述べたように、「食」は健康のベースとなる体を作ります。チームに加わる管理栄養士や臨床検査技師が、それぞれ「食」と「医」の両方に精通していると、チーム医療の進行がスムーズになりますし、患者さんからの信頼性も高くなります。その意味では、今後、検査データを理解できる管理栄養士、栄養マインドのある臨床検査技師が求められています」。

 管理栄養士と聞くと、学校や施設などで給食の献立を作る人というイメージがあるかもしれませんが、そこに「医」の知識も兼ね備えた人の活躍の場は、医療現場だけでなく、さまざまな分野に広がっています。「管理栄養士は、これまでにも医療現場のほか、給食や食育現場、栄養教諭などいろいろな活躍の場がありました。最近はスポーツの世界でも栄養学へのニーズが高まっていますし、健康志向の高まりとともに、サプリメントの売り上げも伸びるなか、ドラッグストアでもニーズが急増しています。就職環境は、右肩上がりです」。

管理栄養士と臨床検査技師、それぞれの視点から”健康”を学ぶ

 「食」と「医」の知識を兼ね備えたスペシャリストになるため勉強している学生さんたちにも話を聞くことに。答えてくれたのは栄養学部で学ぶ4年次生の荒木美香さんと、清水優さん。共に管理栄養士をめざしつつも、荒木さんは、臨床検査技師の資格取得をめざすなど、より医学的な部分に関心があり、清水さんは栄養士の観点から医学の知識も学んでいるそう。(※2016年度からは、学科改組により各専攻に分かれます)

  • 栄養学部栄養学科4年次生 荒木美香さん

――大学では、どんな授業があるの?
荒木さん 栄養学系や医学系の専門知識を学ぶさまざまな授業や実習があります。印象に残っているのは“病院での学外実習”です。患者さんへの栄養指導や医療チームでの管理栄養士の仕事、近隣の保育園での食育指導など、いろいろな体験をさせていただきました。講義で学んだそれぞれの知識を実際に生かせることができ、応用力がつきました。

清水さん 私は“給食経営管理論実習”です。この実習では、100人の給食を作るのですが、大量調理の難しさを実感しました。私は、自衛隊の駐屯地で実習をしたのですが、一日3200キロカロリーと、一般成人の1800〜2000キロカロリーと比較して摂取量や食べる量の多さに驚くとともに、私たち一般成人との違いも学びました。
  • 栄養学部栄養学科4年次生 清水優さん

――「医」から「食」、「食」から「医」を学ぶメリットって?
荒木さん 臨床検査技師は、患者さんに対して検査を行い、検査データを診断や治療を行う医師や管理栄養士など他の医療職の方々に役立ててもらいます。検査段階で栄養の知識があると、患者さんの食習慣などの背景も理解でき、他の職種の方への連携もスムーズで、患者さんにも的確なアドバイスができると感じます。

清水さん 病院勤務でなくても、普段の生活の場でもケガをした人や病気の人に食事を提供するシーンがあると思います。そのときに、医学系や臨床の専門知識があれば、より良い食事が提供できます。

――大学で学んだ知識が、実際に役立っていると感じることってある?
荒木さん 栄養学と医学の知識を学んだことで、生活習慣病の不安がある母親に状態に応じた料理のレシピを作ってあげました。すごく喜んでくれて、最近はよくほかのレシピや食べ方の工夫を聞きに電話をしてくれます。また、一人暮らしをしている私自身の普段の食事も、すごく健康的になりました。

清水さん スポーツ選手の食事を預かるときに、身体の働きや医学の知識は役立つと思います。また、私は栄養教諭免許取得の勉強もしているのですが、この大学で学ぶことで、給食を作るだけでなく、医療やスポーツ、教員など将来の可能性が広がりました。

 最後に将来の目標を聞いたところ、「医療の知識を持った管理栄養士として、病院で働くことです」(荒木さん)、「野球が大好きなので、高校球児が入る寮の寮母になり、管理栄養士としてチームを支えていきたいです」(清水さん)と笑顔を見せる2人。いろんな夢に「食」と「医」の知識が役立つのですね。

栄養学を学んだ学生が、社会とのコラボ活動で大活躍!

 同大学では、授業のほかにも社会と連携した活動も活発です。そのひとつが、兵庫県と神戸市等が主催する 第5回神戸マラソンに向けて作った「マラソンレシピブック」の作成。良質なタンパク質、ビタミンA、ビタミンB2などが豊富に含まれる栄養価の高いチーズを使用した、参加ランナーに役立つレシピを学生が考案して小冊子にまとめるというもので、Q・B・Bブランドでおなじみの、乳製品メーカー・六甲バター社と手を組んだ産学連携企画です。

  • 「お腹いっぱい! さっぱり! 和風うどんピザ」

 選ばれた全7品のうち、「お腹いっぱい! さっぱり! 和風うどんピザ」を考案したのが3年次生の川口はるかさん。「私の好きなうどんと、家に常備している同社のスライスチーズを使いました。採用されたと知ったときは、驚きました」と川口さん。3年次生の熊谷早織さんは、「ネバネバねば〜るとろろ焼き」「野菜たっぷり情熱ロールキャベツ」の2品が選ばれたそうで、「貧血につながる鉄不足を予防できるメニューを考えました」。

  • 「ネバネバねば〜るとろろ焼き」

 「食材の栄養価や栄養バランスの知識が役立ちました」(川口さん)、「鉄不足が身体に与える影響や、ビタミンCが鉄の吸収を高めるという知識が役立ちました」と、2人とも大学で学んだことをメニュー作りに活用。栄養バランスはもちろんのこと、味についてもこだわっていて、試食会でも大好評だったそう。

  • 「野菜たっぷり情熱ロールキャベツ」

 「見た目や味だけでなく、作るとき、食べるときの楽しさも必要だと学びました」(熊谷さん)。「自分の料理を他の人に食べてもらう、なおかつ健康になってもらえる。そんな喜びを実感できました」(川口さん)。

 そのほか、シティホテルとして数多くの国際会議も開催している神戸ポートピアホテルが運営している学内のカフェ・レストラン「ジョリポー」とコラボレートしたメニュー開発も。“管理栄養士の卵としての創意工夫とおいしさを追求したメニュー作り”という企画にチームを組んで参加したのが、2年次生の岩永真生さんと上野千春さん。参加した感想について聞いてみると、「一般の方に食べてもらうメニュー作りは初めてだったので楽しみでした」と岩永さん。上野さんは、「食べる人の気持ちを考えながら作りました」と答えてくれました。

  • 「3つのHappy・カラフルプレート」

  メニュー開発中は栄養面にこだわりながら、大学の先生にも相談。試行錯誤の末に、岩永さんは食物繊維の多い豆を使った「夏野菜とお豆のラタトゥイユ」を、上野さんは牛肉の代わりに豆腐を使い、さらに食感も楽しめるようにとレンコンを加えた「ヘルシー豆腐ハンバーグのロコモコ丼」を完成させました。さらに、料理長にアドバイスをもらいながら、ほかのチームメンバーが考案したトマトとチキンの焼玄米リゾットと合わせた「3つのHappy・カラフルプレート」を発売し、好評を得たそうです。

 現在は第2弾メニューを開発中。「栄養価計算をしたり、料理長にアドバイスをいただけたり、貴重な体験ができます」(岩永さん)、「一般の方も訪れるお店なので、多くの人に楽しんでもらえるのがうれしいです」(上野さん)と、2人とも充実感いっぱいの表情! 大学で学んだことを活かし、自ら考えたものが形になる。この充実感がこれからも大学で学ぶ上で自信となりモチベーションにつながるはずです。

神戸学院大学

2016年に大学創立50周年を迎える神戸市で最大規模の私立総合大学。人文・社会・自然のバランスがとれた9学部を擁する。2014年度に「現代社会学部」、2015年度に「グローバル・コミュニケーション学部」を新設し、情報化社会・国際化社会に対応することのできる優れた人間育成に力を注いでいる。また、2016年には栄養学部に“管理栄養学専攻”と“生命栄養学専攻”の2専攻を設置。


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