自然災害に立ち向かう取り組み〜広島工業大学〜

日本の夏といえば台風がつきもの。毎年8〜9月はハイシーズンで、いくつかの台風が日本列島を横断しています。ときには大災害を起こす台風の脅威と知っているとタメになる対策法について、さまざまな災害の研究をしている広島工業大学に直撃取材しました!

台風の脅威を○○に例えてみた!

 日本の夏とは切っても切り離せない台風ですが、昨年は「台風の規模を表す言葉がボジョレーヌーヴォーのようだ」とSNSで話題になりました。実際、「○年に一度の大型台風」と言われてもちょっとピンとこないかも…。もっと具体的に理解したい!という要望に答えてくれたのは広島工業大学環境学部 地球環境学科の田中健路先生。まずは、台風の脅威と対策について教えてくれました。

台風の脅威その1 突風
 天気予報などでよく聞く「風速○○m」という表現。これを野球の投手が投げる球に例えると、風速40mの場合、球速140kmと同じくらいの速度があります。つまり、台風の通過時には、ガラスの破片などもこの速度で飛んでくる可能性があるということ。どんな小さなものでも凶器になるので、突風が吹いている時は窓から離れて、低い姿勢で身を守ることが重要になります。また、都心などビルが複雑に立ち並ぶ場所では瞬間的な突風が吹きやすく、上から下へ叩きつけるような突風が吹くこともあるので注意を。

台風の脅威その2 大雨
 次に気をつけなければいけないのが大雨で、河川の氾濫や水没などさまざまな水害を引き起こします。台風が日本に近づいてくると、気象レーダーで見ると台風の中心付近や、太平洋側の山の斜面に沿って大雨が降っている様子が良く見られます。しかし意外と知られていないのが、台風の中心から500km以上離れた地点で発生する、螺旋状に列をなした積乱雲は要注意だということ。これは東京を台風の中心と仮定した場合、北は秋田から西は大阪までを含みます。台風の中心からこれだけ離れた場所でも、台風の影響で豪雨が降る場合があるのです。今後、気象情報サイトでレーダーや気象衛星画像で雲の様子を見る時の参考にして下さい。
台風の脅威その3 竜巻
 3つ目が竜巻です。暖かく湿った空気が台風に向かって流れやすい、台風の進行方向に対して右半円側(東側)で発生しやすいことが知られています。先ほど述べた雨雲の列の中に、かぎ状の形をした雲がレーダーの雨の分布で見られるときには特に注意が必要です。竜巻の規模によっては風速70m以上に達する場合があり、木造家屋が全壊したり、数十トンの重さの列車が吹き飛ばされたりするなど、想像を絶する破壊力を持っています。あらゆるものを巻き込む竜巻の恐ろしさは、よく知っておいた方がいいでしょう。

台風だけじゃない 2次災害にも注意!

 台風の脅威といえば、雨風だけじゃありません。昨年8月、豪雨の影響で起こった土砂崩れは、広島に大きな被害をもたらしました。被害が拡大した理由について、田中先生はさまざまな要因を挙げます。

  • 環境学部地球環境学科の田中健路先生

 「まず、大雨が発生した時間帯が深夜であったため、地域住民の方が自宅周辺の状況や最新の気象情報を把握しづらかったことが挙げられます。これに加えて、落雷で停電が起こったため、テレビなどから適切な災害の情報を取れなかったことが挙げられます。また、過去の大雨では災害が発生していなかったので、地域住民の方たちもそれほど災害を警戒していなかった。さらに、土砂災害が起きたときは一時的に近くで待機して、タイミングに合わせて避難所へ移動することが大事なのですが、すぐに外に出て土砂に飲み込まれてしまった人が多かったのではと考えています」。

 今年も大規模な土砂災害が起こる可能性はあるのでしょうか? 今後災害の発生が予測される危険なエリアは? 田中先生は予測することは難しいと前置きした上で、いくつかのポイントを説明してくれました。「ふだん雨が少ない地域でも、激しい雨が数時間続くと土砂災害の危険が高まります日ごろからよく雨が降るところは、表面の土砂がある程度削り取られているので、大きな土石流にはなりにくいです。広島市も日ごろは雨が少ない地域でした。四国などは大雨が多いので同じ雨量で比べた場合、起こりにくいと言えると思います」。

 最後に田中先生は自身の研究もふまえて、自然災害への向き合い方についてこう語ってくれました。「気象衛星などの最新の観測技術やスーパーコンピュータを利用した予報技術の更なる進歩により、台風の動きなどを詳細に把握できるようになれば“初動対応”が早まるので、より人身を守ることが可能になるでしょう。しかし、人が自然災害を止めることはできません。どうやって災害を未然に防ぐことができるかを、考え続けていかなければなりません」。

気象災害の研究から得たスキル

  • 環境学部・地球環境学科の4年生の大幡由季さん

 最後に広島工業大学で実際に災害の研究をしている、学生の方々にお話をうかがいました。環境学を専攻している大学院2年生の伊藤大樹さんは、災害研究の意義についてこう説明します。「今は気象津波の研究をしています。コンピュータを使ったケーススタディです。過去に長崎や鹿児島で起きた事例では、船舶や民家に被害が出ました。研究を進めることで、そのような被害を防ぎたいです」。

 広島の豪雨について研究しているという環境学部・地球環境学科の4年生、大幡由季さんは「小さいころから雲が好きで、今はコンピュータを使った集中豪雨のシミュレーションを行っています。早く正確に予測するための方法ができれば、その分多くの人の命を救うことができるので、とてもやりがいがあります」と胸を張ります。

  • 環境学を専攻している大学院2年生の伊藤大樹さん

 さらに、伊藤さんは研究を通じて意外な能力を身につけることができたと言います。「学会などで、専門分野の研究者の中でもあまり知られていない気象津波のことを説明する過程で、理解してもらうために多くの時間がかかりました。発表の機会が多いので、プレゼン力やコミュニケーション力がつきました」。伊藤さんは教育関係の企業から内定が出ているそうで、「今まで行ってきた研究では、データや情報を違う形で表現する能力が重要でした。このスキルを教育の現場で生かしていきたいです」と意欲的です。

 大幡さんも建設コンサルタントに内定が決まりました。大学での研究を生かして、ハザードマップの作成や橋の設計などに取り組みたいそう。「理系は女性にとって難しいイメージがあるかもしれませんが、数字が得意でなくても大丈夫です。少しでも興味があれば、ぜひチャレンジしてみてほしいです」と、これからの地球科学の発展を担う高校生たちにメッセージをくれました。

広島工業大学

建学の精神「教育は愛なり」と教育方針「常に神と共に歩み 社会に奉仕する」を実現することで、倫理観を持った技術者の育成に取り組む。「入学してからの4年間と卒業後の3年間を支援する」をモットーに、「内定率の向上」「就職の質の確保」「早期離職率の低減」の3つの基本姿勢で支援しています。

広島市佐伯区三宅2-1-1
(取材協力:広島工業大学)
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