自然災害に立ち向かう取り組み〜広島工業大学〜
台風の脅威を○○に例えてみた!
天気予報などでよく聞く「風速○○m」という表現。これを野球の投手が投げる球に例えると、風速40mの場合、球速140kmと同じくらいの速度があります。つまり、台風の通過時には、ガラスの破片などもこの速度で飛んでくる可能性があるということ。どんな小さなものでも凶器になるので、突風が吹いている時は窓から離れて、低い姿勢で身を守ることが重要になります。また、都心などビルが複雑に立ち並ぶ場所では瞬間的な突風が吹きやすく、上から下へ叩きつけるような突風が吹くこともあるので注意を。
次に気をつけなければいけないのが大雨で、河川の氾濫や水没などさまざまな水害を引き起こします。台風が日本に近づいてくると、気象レーダーで見ると台風の中心付近や、太平洋側の山の斜面に沿って大雨が降っている様子が良く見られます。しかし意外と知られていないのが、台風の中心から500km以上離れた地点で発生する、螺旋状に列をなした積乱雲は要注意だということ。これは東京を台風の中心と仮定した場合、北は秋田から西は大阪までを含みます。台風の中心からこれだけ離れた場所でも、台風の影響で豪雨が降る場合があるのです。今後、気象情報サイトでレーダーや気象衛星画像で雲の様子を見る時の参考にして下さい。
3つ目が竜巻です。暖かく湿った空気が台風に向かって流れやすい、台風の進行方向に対して右半円側(東側)で発生しやすいことが知られています。先ほど述べた雨雲の列の中に、かぎ状の形をした雲がレーダーの雨の分布で見られるときには特に注意が必要です。竜巻の規模によっては風速70m以上に達する場合があり、木造家屋が全壊したり、数十トンの重さの列車が吹き飛ばされたりするなど、想像を絶する破壊力を持っています。あらゆるものを巻き込む竜巻の恐ろしさは、よく知っておいた方がいいでしょう。
台風だけじゃない 2次災害にも注意!
今年も大規模な土砂災害が起こる可能性はあるのでしょうか? 今後災害の発生が予測される危険なエリアは? 田中先生は予測することは難しいと前置きした上で、いくつかのポイントを説明してくれました。「ふだん雨が少ない地域でも、激しい雨が数時間続くと土砂災害の危険が高まります日ごろからよく雨が降るところは、表面の土砂がある程度削り取られているので、大きな土石流にはなりにくいです。広島市も日ごろは雨が少ない地域でした。四国などは大雨が多いので同じ雨量で比べた場合、起こりにくいと言えると思います」。
最後に田中先生は自身の研究もふまえて、自然災害への向き合い方についてこう語ってくれました。「気象衛星などの最新の観測技術やスーパーコンピュータを利用した予報技術の更なる進歩により、台風の動きなどを詳細に把握できるようになれば“初動対応”が早まるので、より人身を守ることが可能になるでしょう。しかし、人が自然災害を止めることはできません。どうやって災害を未然に防ぐことができるかを、考え続けていかなければなりません」。
気象災害の研究から得たスキル
広島の豪雨について研究しているという環境学部・地球環境学科の4年生、大幡由季さんは「小さいころから雲が好きで、今はコンピュータを使った集中豪雨のシミュレーションを行っています。早く正確に予測するための方法ができれば、その分多くの人の命を救うことができるので、とてもやりがいがあります」と胸を張ります。
大幡さんも建設コンサルタントに内定が決まりました。大学での研究を生かして、ハザードマップの作成や橋の設計などに取り組みたいそう。「理系は女性にとって難しいイメージがあるかもしれませんが、数字が得意でなくても大丈夫です。少しでも興味があれば、ぜひチャレンジしてみてほしいです」と、これからの地球科学の発展を担う高校生たちにメッセージをくれました。
広島工業大学
広島市佐伯区三宅2-1-1
(取材協力:広島工業大学)