流星観測で生命の謎に迫る! 研究者たちが挑む「宇宙への旅」〜千葉工業大学〜

6月末、ロケットの打ち上げ失敗により消失した千葉工業大学の「METEOR(メテオ)」。大々的にニュースになったこの話題は、これまで宇宙に関心のなかった人からも注目を集めました。実は、この国際宇宙ステーション流星観測プロジェクト、千葉工業大学の「惑星探査研究センター(PERC)」の生命の存在を解き明かすアストロバイオロジーの一環で研究・開発が続けられているものなんです。その壮大な研究の中身と、2度の打ち上げ失敗にも負けない研究者たちの情熱に迫ります!

惑星探査研究センターの流星観測プロジェクトって?

 PERCではさまざまなプロジェクトが進められています。「今もっともアツいのが、流星観測プロジェクト・メテオと超小型衛星プロジェクト・S-CUBE(エスキューブ)」。メテオは3度目の挑戦が決定しているほか、S-CUBEは8月に宇宙に飛び立つJAXAの宇宙ステーション補給機「こうのとり」に搭載され打ち上げられるんです!

  • メテオ(超高感度CMOSカラーハイビジョンカメラ(予備機))

◆メテオとは
 国際宇宙ステーション(ISS)から超高感度CMOS カラ―ハイビジョンカメラにより流星の長期連続観測を行うプロジェクトで、ISSの米国実験棟「Destiny (デステニィー)」内の窓越しに観測を行います。実現すれば世界で初めて、宇宙から流星を長期連続観測することになるんだそう。宇宙からは天候に左右されず常に観測ができるほか、流星の明るさから塵の大きさを知ることができ、流星の光をプリズムのようなもので波長毎に分けることで、塵の化学組成がわかるんだとか。「流星の塵は彗星や小惑星から出た塵なので、流星を観測することは彗星や小惑星の物質や成り立ちを理解することにも繋がるんです」。

  • 国際宇宙ステーション(ISS)外観観察カメラからの映像

◆S-CUBEとは
 流星の紫外線はオゾン層に遮られて地上に届かないため、これまで詳しい観測はされませんでした。その謎に迫るのがS-CUBEで、「宇宙から流星の紫外線を観測する」ことがメインのミッション。世界初のプロジェクトで、世界中から注目されているんです。可視カメラと紫外線センサーが搭載されていて、流星の発光メカニズムの解明や、流星塵成分の新たな情報を得ることが期待されています。

 実はこれらのプロジェクト、生命誕生の起源に迫ることができるかもしれないんです。S-CUBEは地球上から観測が難しかった紫外線領域を測定しますが、この測定により、生命維持に必要な必須元素が含まれているか?を調べることができるんだとか。命の神秘を宇宙から紐解いていくなんてロマンチックですね!

 「そのほかにも8 月16 日のこうのとりの打ち上げでは、同大学とJAXAが共同で開発した微小宇宙デブリ検出器CDM(Chiba-koudai Debris Monitor) がISSへの飛行中や係り保留中にデブリ(宇宙ゴミや破片)の観測を行います。CDMは、振動を電気信号に変換する“圧電性PZT素子”を利用して、0.1mm以下の過去の人工衛星やロケットの破片などの、人工的な宇宙ゴミの衝突を検出します」。このように、夢ある宇宙研究に様々な形で挑戦しているようです。

失敗しても決して諦めない研究者魂

  • 荒井朋子上席研究員

 とはいえ、まだまだ宇宙は簡単に行ける場所ではありません。メテオは2014年10月と2015年6月、2度打ち上げられましたが、2回とも輸送ロケットの爆発により失敗となり、まだ宇宙に旅立ててはいないのです。「メテオ」プロジェクトチームの開発責任者である荒井朋子上席研究員は、両方の打ち上げに立ち会い、失敗を間近で見ていましたが、それでも諦めてはいません。すぐに頭を切り替えて、次の打ち上げに向かってプロジェクトを進めています。

 スムーズに次の挑戦を行える大きな理由は、不測の事態を想定して予備機を製作していたこと。「3回目のチャレンジは2015年12月予定で、補給船「シグナス4号機」への搭載が計画されています。」時間もお金も頭脳も使う宇宙プロジェクト。1年間に3回も打ち上げ計画を立てるなんて、ほかではそうそうありません。これには、プロジェクトを円滑に進める秘密がありそうです。荒井上席研究員に聞いてみました。

 「プロジェクトを進めるには、やはりチームメンバーとの協力体制は重要です。PERCのチームメンバーだけではなく、レンズやカメラの開発メーカーの方やNASAのプロジェクト担当者などの協力なくして、プロジェクトを進めることはできません。そして、失敗を経験して特に強く感じたのは準備力です。2度目の打ち上げのときも、大学は失敗に備え、予備機の製作を理解し、支援してくれました。そのお蔭で、すぐに3度目が決まったんです。このような不測の事態を予測して、準備しておく力も大切ですね」。

宇宙の不思議を知りたい! 研究者を目指すなら何が必要?

 さらに、宇宙に関わる研究者を目指す学生へもアドバイスを頂きました。

 「宇宙への夢があるなら、まずは自分の興味と向き合って、かかわりを持とうとすることが大切です。私も地球にだけなぜ生命がいるのか、地球はどうやってできたのか、ほかの惑星と何がちがうのか、という問いの答えを知りたいと思って、隕石やアポロの月試料を研究するようになりました。途中、JAXAで宇宙ステーションや月探査のプロジェクトに携わりましたが、JAXAでのプロジェクトの経験や隕石研究を通じて、宇宙開発や太陽系の物質を学んだ知識、それらが合わさって、今回のメテオプロジェクトでの挑戦が実現できているのだと思います」。

 なるほど、でもやっぱり理系でないと研究者になるのは難しいでしょうか?

 「理系が苦手でもかまいません。たとえば、自分の興味や疑問からアイデアを考えるのであれば誰にだってできるのではないでしょうか。どんな角度からでもかまいません。ぜひ、夢を持ち続ける姿勢を忘れないでください。宇宙に興味があるのであれば、千葉工業大学、そしてPERCを目指してみるのもいいのと思いますよ」。

 ちなみに、千葉工業大学には「機械電子創成工学科」という新しい学科が2016年4月より誕生します。この学科では、ハイブリッドカーやスマートフォンと連動した家電機器など、機械と電子回路が一体となった新しいメカトロニクス機器を生み出すものづくりを学べるそう。さらに、学科内の宇宙輸送工学研究室では、ロケットや化学推進器などを機械工学・燃焼工学をベースとして、宇宙輸送に関するシステムを幅広く研究・開発。次世代型の宇宙輸送機を提案することも可能なんだそう。家庭、医療、福祉、そして、宇宙と、あらゆる場面で必要とされる、未来の技術に携わりたいなら、機械電子創成工学科のドアをノックしてみるのもいいかも?

千葉工業大学

建学の精神として、「世界文化に技術で貢献する」を掲げる私立工業大学として最も古い歴史を持つ工科系大学。モノづくりに関わる多くの研究を行い、先進的なロボット開発、惑星探査研究、人工知能研究にも生かされています。科学技術の厳しい環境の変化のなか学生自信で考え、常に挑戦する研究者を育成し、広く社会に貢献しています。

津田沼キャンパス:千葉県習志野市津田沼2-17-1
(取材協力:千葉工業大学)
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