【第2回】勉強嫌いの中学生が難関国公立に合格! 克服できた英語学習法とは<後編>
プログラムは成長に合わせて “語学の習得”は場数がものを言う
田中夏生氏(以下、田中) 中高生が学ぶ上で大事なのはある種の一体感、だと思うのです。あの子はこれぐらいできてるとか、あの子はこれやっているとか。周りが気になる年頃でもあるので、みんなで一緒にやって行こう、という雰囲気づくりがとても大事だと考えています。その方法のひとつに“仲間と学ぶ”ということがあります。
―――田中さんの教室では、どんなプログラムで実践されていますか。
田中 “仲間と学ぶ”というのは、生徒同士の意見を共有してできてくるものだと思っています。私の教室では、中高生のプログラムは、ネイティブ講師が担当しています。生徒にはタブレットを持ってきてもらい、さまざまな分野で活躍する人物が英語でプレゼンテーションをする『TED(テッド:Technology Entertainment Design)』などを観て、それぞれ意見を出してもらいます。他人の意見を聞くと、自然と質問したり自分の考えを伝えたりする空気になってくる。英語で伝えることが学ぶ場になり、子供が自発的に「やりたい」と入ってきてくれるんです。
こういった学習方法は「ピア・ラーニング」と呼ばれ、ある大学の赤本では言語学でも効果が高いと言われているんですよ。その名の通り、ピア(peer:仲間)と学ぶ(learn)ということで、子どもたち同士のコミュニケーションを促す教育手法です。
田中 小学校4年生の時は、Monday、Tuesday…と単語カードを作って覚えさせるのが大変だったのに、一浪して難関の国公立大学に合格した生徒がいました。このプログラムを通して、中学校2年くらいの時に、急に自分で勉強をすることに目覚めたんです。勉強に興味がなかった子に、仲間と一緒に勉強する楽しさを知ることで、突然“やる気スイッチ”が入ることがある。
模試の結果もグループで共有させるようにしています。英語に限らず、他の教科の成績やそれぞれの悩みなども打ち明け合うことも…。共有し合える仲間を作ると、不思議と成績や目標達成に効果が表れている。他の教室にはない雰囲気かもしれません。
田中 この年代は、小学校6年生までのような「積み上げ式」に英語力を伸ばす形にはしていません。小学1年から12年間通って英語を話せるようになった卒業生をモデルに、成功の法則をシステムに落とし込んでいます。
大学生や社会人向けに、プレゼンテーション英語を教えることもあるのですが、彼らに必要なのは、プレゼンで使う英語ではないんです。プレゼン後に続く質疑応答やディスカッション、交渉での英語の“対応力”です。これを備えた人材が少ないのが現実です。
語学の習得は場数がものを言います。英会話による対応ができなかったためにチャンスを失ってしまうような経験を、生徒たちにはさせたくないと思っています。
「達成するためにはいつまでに何ができるようになっていればいいか」というブレイクダウンをして、ゴールから時間軸を遡る形で、マイルストーンを設定するようなプログラムを構築しています。教えてきた教員と学んできた生徒が一緒になって、どんな場面でも英語で対応できる力がつくプログラムを日々考えています。
田中夏生(たなか・なつき)
横浜国立大学、ビクトリア大学(カナダ)卒業。TOEIC990点(満点)。カナダにて英語教授法を学び、2006年に「Lesson4u」を設立。講師として幼児から大学受験生に英語を教えるだけでなく、英語教育のスペシャリストとして様々な教育機関にも助言・指導を行っている。
■Lesson4u :http://www.lesson4u.jp/(外部リンク)
(取材・文/柏野裕美)