英語の文通から始まった…辻一弘が特殊メイクでアカデミー賞を受賞するまで

 そんな辻氏に、新たな転機が訪れたのは2012年。ハリウッドで得た評価をよそに、孤軍奮闘の現代アートの道を選んだ。学生時代から変わらず、「大勢の人たちに囲まれて仕事することが苦手」という理由もあるが、その決断の裏には、「自分が本当にやりたいことするために」という強固な信念があった。

 「今回の受賞もそうですが(笑)、日本はとかく結果が出てから評価するというのが常ですよね。でも、評価が出るのを待っていては、自分が本当にやりたいことはできませんし、うまくいくわけがないんです。ただ、日本は、日本で生まれた日本人にとってはとても居心地のいい、温室のような国。外国に出てまで仕事をするのは、ためらってしまう若い人が多いのも理解はできます。海外に出ることが正解だとは言いませんが、これだけ開かれた世界になっているのに外に出ないのはもったいないことでもあると思うんです」
 今回の受賞をきっかけに、さらに多くの仕事が舞い込んでいるようだが、「これからもアートの仕事をメインにやっていきたい」という。

 「オスカーをいただいても、僕がやりたいことは変わりません。ただ、アートの仕事はお金も時間もかかるんですよ。なので、これからはやりたいと思える映画の仕事があればやらせていただき、アートの運転資金にも回していきたい。すごくいい環境ができたと思っています」

 自分のやりたいことを追求し、結果的に最高の評価と環境を得た辻氏。現在は、「2020年頃に東京で個展をやりたい」と考え、準備に忙殺されているという。彼の強い意志から生まれる作品、そして今後の動向に期待したい。

(文:よしひろまさみち)

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3/30(金)公開
監督:ジョー・ライト
出演:ゲイリー・オールドマン クリスティン・スコット・トーマス リリー・ジェームズ スティーヴン・ディレイン ロナルド・ピックアップ ベン・メンデルソーン

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