「テイラー・スウィフトの曲は隙がない」、音楽プロデューサー・中田ヤスタカが海外ヒットメーカーを語る

――日本以上に海外のアーティストが、中田さんの音楽の影響を受けているようですが。
中田ヤスタカ 世界中に僕みたいなミュージシャンは結構いると思います。音楽マニアたちが、「ちょっと面白いぞ」「一緒にやってみたい」と興味を持つような。でも、その人たちがその国でメインストリームかというと、ちょっと違うと思うんです。ワールドワイドに共通する“ヒットチャートを賑わす人たち”は、音楽にあらゆる要素を詰め込める人たち。世界のヒットチャートをチェックすると、一つの曲を分解して、完璧な状態に組み立てるのがうまい人たちは大勢いて、それはさすがだなと思います。たとえば、テイラー・スウィフトの曲は、まったく隙がない。「もっとこうした方がいいんじゃない?」、みたいなポイントを、ことごとく潰してくる(笑)。その一方で、天然で感覚的にぶっ飛んでいる人の曲って、隙がすごくあるんです。だけど、トップのヒットチャートを作るイケイケの人たちに影響を与えるのは、実は隙だらけのミュージシャンの方だったりするんですよ。僕もそっちの方かな、と思うんです。僕自身、常にカウンターでいたいからかもしれないけど、自分が自分のまま世間に広く認知されるイメージは湧かない。でも、ヒットチャートを賑わすプロデューサーが、自分の曲を聴いて育った時期がある…とか(笑)。そういうイメージならリアルかな。

――結果として声がかかっているだけで、自分から海外に打って出たいタイプではない?
中田ヤスタカ もともと、積極的に周りに声をかけるタイプじゃないですからね。自分が今20歳だったら、デビューしたかどうかも怪しい。普通に、YouTubeで曲を公開して、「“いいね”をいっぱいもらいたいな」と思っているだけかもしれない(笑)。

――日本でやる音楽活動と海外の人とコラボする活動とで、意識もさほど変わらない?
中田ヤスタカ そうですね。結局、日本は日本の中だけで消費されるものが話題になる。日本が世界に発信する音楽があることを、日本人がまだ信じてないですよね。

――これだけ海外での活躍が目立つ中田さんですが、英語は?
中田ヤスタカ 無理無理(笑)。努力しないですぐ身につくなら話したいです(笑)。ただ、外国語イコール英語とも思ってなくて。それが何語でも、自分が作ったメロディにハマるものであればいい。日本人であることにはアイデンティティを持っているけれど、音楽をやる上で「日本語じゃなきゃ」とは思わない。日本人である僕が音楽を作っていることが重要だと思います。
――2016年にはリオ五輪閉会式の音楽を担当された中田さん。2020年の東京五輪でも、と思いますか?
中田ヤスタカ 音楽を作ること自体はすごく自発的なことだけど、何かのテーマに採用されるかどうか、みたいな話に関しては、いつも受け身になることが多いですね。

――コンペなら?
中田ヤスタカ コンペも、あんまり出したことはないです。僕の作りたい曲は、勝ち抜くための音楽じゃない。世の中はそういう曲に溢れているけど、僕が作りたいのは、多分“コンペなら通らない曲”になっちゃう(笑)。採用不採用を決定する人たちが、「これは、ちょっと不安」となる曲を作りたい方なので。ただ、僕に合っていると思ってもらえるような演出があった時に、そこに関して曲のオファーがくるとか…。もしそういうことがあれば、光栄だし、嬉しいだろうなとは思います。
(文:菊地陽子)
オリコン日本顧客満足度ランキングの調査方法について

当サイトで公開されている情報(文字、写真、イラスト、画像データ等)及びこれらの配置・編集および構造などについての著作権は株式会社oricon MEに帰属しております。これらの情報を権利者の許可なく無断転載・複製などの二次利用を行うことは固く禁じております。