2012年07月10日 10時00分

【後編】ロケット打ち上げも! 生き残りをかけた、イマドキ学習塾のユニークな取り組みとは?

 前編では、「小学生ロケット宇宙へ」と称し、小学生を対象に都内で初めてモデルロケットを打ち上げた早慶道場を紹介したが、後編では、「海外留学」、「7つの習慣」を取り入れた2つの学習塾を紹介する。

■【「留学道場」で生きる力を育む】

 静岡県西部を中心に11教室を展開する和田塾は、地方の学習塾が窓口となり地域の生徒を海外に送り出す留学支援組織「ISC留学net」を2011年12月に立ち上げた。現在36府県58拠点まで広がり、拠点数では国内最大規模の留学団体となっている。

 「国内の留学支援機関は主要都市に密集しており地方には留学の相談窓口がない。全国各地の学習塾が連携すれば地方の学生も留学しやすくなり、昨今いわれる“若者の内向き化”の改善につながると考えた」と和田塾の大場代表は語る。これは地方の生徒に留学の機会が広がっただけでなく、生徒確保で苦戦する地方の中小学習塾にとっても新たな集客のきっかけとなっているようだ。

 同塾は、今年6月からは留学支援を強化するため「留学道場」というユニークな取組みを始めた。これは、武道や芸道のように鍛錬しながら自らを高めてゆく“道”の考え方を留学にあてはめたもの。道場に入門するには「留学道検定」を受験することが条件で、これにより「ポジティブ力」「問題解決力」「地球人力」など、海外留学で身につく総合力を可視化できるという。これまでは留学の成果といえば、英語の成績がどのくらい良くなったかなどでしか評価されなかったが、海外留学で身につくのは語学力だけでなく「人間として生きていく力」であることを説いている。

■【ベストセラー本「7つの習慣」を応用】

 全世界で出版部数2000万部を記録する人気のビジネス書「7つの習慣」を取り入れた「7つの習慣J」というユニークな授業を行うのは、個別指導塾として全国で約900校舎を展開するITTO個別指導学院チェーンだ。

 「7つの習慣J」とは“やる気を継続する力”を引き出すため教育プログラムのこと。毎週1時間の授業で、有名スポーツ選手や歴史上の偉人の生きざまを例に、日常生活や普段の学習だけでは身につけることが困難な7つの習慣を伝え、実践を促すという内容だ。例えば「毎日食器洗いをする」「靴を揃えてから家に上がる」など身近なことから取り組める「今週のチャレンジ」を生徒自身に決めさせ、1週間実践させる。その翌週の授業で、生徒と一緒に達成度合いをみながら振り返りをしていく。

 この授業を通じて生徒自身が将来の夢や目標を持つことの大切さを実感することで、勉強に対する意識が変わり学力向上に結びつくという。興味深いのは、そもそも勉強が嫌いだったり、将来の夢がもてなかった生徒ほど成績があがる傾向があるということだ。

 また、ITTO個別指導学院では「生徒たちの人間力を高めることが成績向上にも役立つ」という考えのもと、自分に自信をつけるためのイベント「チャレンジカップ」(一般社団法人日本チャレンジ教育協会主催)に毎年2000名以上の生徒が参加し、「7つの習慣J」を実践することで多くの入賞者を出している。

 前編・後編のこれら3つの学習塾に共通しているのは、「人間力を向上させる」という教育理念にある。受験はあくまで過程であり、生徒たちは志望校に入学してようやくスタートラインに立つ。学習塾が生き残るためには、「合格」という目の前の目標だけでなく、その先にある社会での活躍を見据えた本質的な教育にかかっているのではないだろうか。(了)

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