語学力さえつけば、それでOKなの?
これからの時代、英語が必要なのは誰でもわかっていること。日本の教育課程でも、中学1年から卒業に至るまで最大10年という時間をかけて学ばせてきた。にもかかわらず、なぜか得意な人は多くない。近年ではそんな長年の教育状況に風穴を開けるべく、各大学でも語学力強化やTOEICの点数等、スキルアップに力を注ぐ動きが高まっている。でもちょっと待って!語学力がつけばそれでいいの?だったらスマホの翻訳アプリがあればいいんじゃない?
ところが、実際に翻訳アプリを片手に海外に出かけても、いちいち機械を介するもどかしさと応用のきかなさから、ボディランゲージで乗り切る人が多いんだとか。やっぱり人と人との関係は“体温”を感じるやりとりがあって、初めて相手に意思が伝わるということなんですね。
神戸学院大学が着目したのはまさにココ。グローバル・コミュニケーション学部は、語学力プラス、コミュニケーション能力の必要性を発信することから始動したんだそう。兵庫県には外国語学部のある大学が少ないにもかかわらず、あえて「グローバル・コミュニケーション」という名前にこだわった点からも、その想いがうかがえます。
語学力+コミュニケーション能力が、自分だけの未来を切り開く
「通訳や翻訳ができるような語学のエキスパートを育てるのとは、ちょっとイメージが違う。人の言葉を通訳するだけの人はもういらない。自分の言葉で発信できる人を育てたいんです」と話すのは、学部立ち上げの指揮をとった伊藤茂副学長。人との会話は教科書通りにはいかないし、目の使い方、表情、声色…すべてトータルで表現してこそ気持ちが伝わるもの。また、ビジネスシーンだけでなく、日常生活でも言いたいことを正確に、必要な分量で、社会人として正しく話せる能力が求められるのもまた日本語と同じ。語学力、知識力、他国の文化も受け入れ尊重できる人間力…。言葉以外にも大切なことがたくさんあるんです。
ただ、シャイな日本人はボディアクションへのハードルも高いし、英語というだけでつい身構えてしまいがち。「語学のレッスンはスポーツと同じで毎日やらなきゃいけませんが、グローバル・コミュニケーション学部は苦痛ではなく楽しく学べ、上達が実感できるようなプログラムを揃えています。恥ずかしさも乗り越えられますよ」。
先生たちに聞く 「グローバル力」ってなんですか?
「教わる人じゃなく自ら考える人に」…中西のりこ准教授
国際力を育てるには、能動的に動ける力も必要。「語学はあくまでもツール」と語る中西先生は、「自分自身が課題を見つけどう人に伝えるかが大切」と話す。「教わる人じゃなく自ら考える人になると、顔つきも1年でガラッと変わるんですよ」。
「人間の幅を広げ、良き社会人になれ」…栗原由加准教授
「仕事の内容もどんどん変化し、学歴さえあればどうにかなる時代ではなくなりました。大きい組織の下につけば安泰だと考えるのではなく、むしろ自分が新しい仕事の先駆けとなって欲しい」と話すのは、留学生を担当する栗原先生。「人間の幅を広げ、良き社会人になれ。必ずできると思います」。
「グローバル」を体験した先輩は…
「経験と知識が1本につながり、目の前が晴れたよう」
…人文学部・森田弘樹さん
実際に海外留学をして、国際力を養った先輩たちもいる。4年次の1年間、中国の南開大学に留学した森田さんは「最初はまったく言葉が理解できず、数ヶ月かけて不自由がなくなってから、ようやく本当の意味での留学が始まりました」と話す。「以前のぼくは中国語検定に合格することだけが目標の薄っぺらい人間でしたが、海外でいろんな国の人と生活を共にすることで経験と知識が1本につながり、目の前が晴れたよう。肌で学んだことがぼくにとって血となり肉となっているんです」。
何ができる? グローバル・コミュニケーション学部
同大学グローバル、またコミュニケーション学部の大きな特長は、3年次の前期に全員が半年間留学すること。日本で語学力を徹底的に鍛えてから送り出すことにこだわっているんだそう。教員免許取得も視野に入れ、4年間で卒業させることにもこだわる。英語、中国語、留学生対象の日本語と3つのコースを擁し、学内でも異文化交流ができる点もポイント。「今まで本学にはいなかったヤンチャな子も歓迎しますよ」とおおらかな笑顔で受験生を迎える伊藤副学長。「大学は教養に対する謙虚さを生む場所。4年間の学びは数値化できないけれど、学費は決して無駄にはならない。行ったのと行かなかったのでは大きく違うんです」。
2015年3月には、地上4階建て・延べ床面積約1万9500平米の新校舎が神戸・ポートアイランドに完成。アクセスの良さはもちろんのこと、建物中央にコミュニケーションボイド(屋内型の中庭)を配し、3階まで吹き抜けるオープンスペースはモダンで開放的なデザインも魅力的。授業開始時間も9時30分と従来より30分遅くすることで、より遠方からの通学も可能になっています。
「歴史や文化に経済社会? それは語学力とコミュニケーション力がつけば自然にあとから興味が湧いてきます。その時、対応できるのが総合大学の強みです。学生たちには興味のドアを開ける様々なキーを手にしてほしい。そして世界各地でいろんな働き方をする人がいて‘卒業生を渡り歩けば世界一周できる’なんていうのが理想ですね」(伊藤副学長)。