センター試験を目前に控えた今、AO・推薦入試での合格者が続々と現れている。この特集でも何度か取り上げたことのあるAO・推薦入試だが、その試験内容については具体的に知らない人も多いだろう。
今回は、有名大学の特徴あるAO・推薦入試をピックアップし、試験内容をくわしくご紹介しよう。
AO入試というと、必ず名前が挙がるのが慶應義塾大学の総合政策学部・環境情報学部、通称「SFC」だ。ここは、1990年の開設と同時に、日本で初めてAO入試を取り入れたパイオニア的存在。
当然のことながら、選考にはかなり力を入れており、その内容は極めてユニーク。A〜Cまで3つの入試方式があり、それぞれ選考基準が異なるが、いずれも筆記試験はない。 中でもA方式では、「活動報告書」という自分の履歴をPRする課題があり、それには論文はもちろん絵を描いてもOK。さらには、ビデオテープやCD-ROM、DVDなども使うことができる。自分がどんな人生を送り、何を考え、そして大学に入って将来は何をしたいのか。それをアピールするためなら、どんな方法でもかまわない。 2008年度のA方式での合格者は、総合政策学部では出願者667人に対し合格者82名(倍率12倍)、環境情報学部では出願者501人に対し合格者74名(倍率15倍)の狭き門。 SFCのAO入試は、選ばれる学生と選ぶ学校側との、まさに真剣勝負なのだ。
関西にある大学の中で、AO入試に力を入れているのが、立命館大学。私立大学としていち早くセンター試験を使った入試を導入するなど、新しい入試方法に対して柔軟な姿勢を持っている。
現在11の学部でAO入試を取り入れているが、中でもユニークな選考方法を持つのが映像学部の「表現力プレゼンテーション方式」によるAO入試だ。 まず課題レポートとエントリーシートなどによる第1次選考を行い、合格者は第2次選考へと進む。この第2次選考での課題は「映像視聴・小論文型」「課題作成型」の2種類。 「映像視聴・小論文型」では、まず映画やアニメーションなどの映像が流され、その内容や表現技法に関する論述課題などが出される。 一方の「課題作成型」では、映像に関するテーマに基づいた絵コンテの作成が課題となる。いずれも、終了後にプレゼンテーションと面接を行う。 まさに、その名の通り、受験者の表現力とプレゼンテーション能力が試される選考内容のため、かなり絞り込んだ受験対策が必要となるだろう。
国公立大学の中で、AO入試に早くから取り組んでいる大学のひとつ、東北大学。ここでは、全学部においてAO入試を実施。なんと、医学部・歯学部・薬学部という難関学部においてもAO入試が行われているのだ。
入試内容は、出願書類、5教科7科目(数学・理科が2科目)のセンター試験のほかは、面接のみ(医学部医学科は小論文もあり)。超難関と言われる国立大学医学部の合否が、面接で決定するというから驚きだ。 もちろん、この面接をクリアするにはかなりの能力が必要となるだろう。知識力、理解力、表現力などが問われるのはもちろんが、研究する者としての“適正”が評価される。大学側は、単なる高学力ではなく、人の身体に関わる研究を行う者としての品格の高さ、そして各分野に関する強い思いと具体的な目標をしっかりと持つ学生を求めているのだ。 2008年度は、医学部医学科で出願者90人に対し合格者11人、歯学部では出願者39人に対し合格者11人と、かなりの難関。 しかし、医師・薬剤師を目指すための第一歩が面接で判断されるのは、将来の志望に確固たる意思を持った受験生にとっては、かなり魅力的なのではないだろうか。
首都大学東京は、2005年に東京都立大学・東京都立科学技術大学・東京都立保健科学大学・東京都立短期大学の4つがまとまって誕生した、新しい大学。ここの都市教養学部理工学系生命科学コースと都市環境学部地理環境コースでは、「ゼミナール入試」というユニークな選考が行われている。
この「ゼミナール入試」に参加するためには、それぞれの学科が開講するゼミナールに参加する必要がある。ゼミナールは6月〜9月に行われ、このゼミナールをすべて修了して初めて、出願が可能になるのだ。ゼミナールの内容は、各研究の入門的な講義から、ある程度の実践的な演習まで短期間ながら幅は広い。 選考で問われるのは、まずゼミナールにおける履修成績。作業課題やレポートの内容で評価されるため、単なる科目の学習を越えた実践力が求められる。そのほかの選考課題は、面接のみ。この「ゼミナール入試」では、大学に入学する前から、学生としての“学ぶ姿勢”が問われることになるのだ。
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