2018年06月14日 06時30分

女将が英語で伝えるゲイシャ文化、金沢の草の根“おもてなし”活動

金沢ひがし茶屋街の「懐華樓」で女将を務める馬場華幸さん(写真中央) [拡大する]

金沢ひがし茶屋街の「懐華樓」で女将を務める馬場華幸さん(写真中央)

 2年後に迫った2020年の東京五輪に向け、インバウンド誘致の波が広がっている中、地方でも地元の魅力を世界へ発信する取り組みが強まっている。2015年に北陸新幹線が金沢まで開通したことで、国内外の旅行者が大幅に増えたという石川県もそのひとつ。歴史的な建物や史跡が残り、情緒溢れる街並みが海外からの注目度も高い。そこで、同県を中心に英会話教室などを運営する株式会社アバンタージュ代表取締役の田中夏生さんに、英語を使って独自の“おもてなし”を行なっている2人の達人について話を聞いた。

■世界に和文化を発信 女将が英語で“お茶屋遊び”を紹介

 馬場華幸(ばば・はなこ)さんは、金沢ひがし茶屋街にあるお茶屋「懐華樓(かいかろう)」で女将を務めている。馬場さんは、イギリス英語の発音が好きで、オックスフォードで生のイギリス英語を学んだ経験も。田中さんの英会話教室でも、イギリス人の先生を指名したこともあるそう。

 そんな馬場さんは、女将として金沢のお茶屋文化を世界に発信するため、毎年カンヌで開催される国際見本市に出向き、英語でお茶屋文化や加賀料理を紹介している。お店では、外国人旅行者を対象に『ゲイシャ・イブニングス』を開催。馬場さんが芸者やお茶屋文化を紹介し、芸者のパフォーマンスを披露する体験企画だ。お客さんが参加できる場面もあり、外国人客に人気があるという。

 通常は一見さんお断りの「一客一亭」のお座敷。持ち前の英語力を生かして、「金沢でしか味わえない和文化」を世界に発信している。

■加賀料理を世界へ ミシュラン二つ星店の最上級“おもてなし”

 料亭「日本料理 銭屋」で2代目主人を務める高木慎一朗さんも、石川県を拠点に海外に向けた活動をしている一人だ。アメリカへの留学経験もある高木さん。ニューヨーク、パリ、ミラノ、香港、シンガポールなど世界各地のホテルやレストランなどから招へいされ、日本料理を披露・指導する、いわば“世界を旅する料理人”だ。2008年にはニューヨークの日本総領事公邸晩餐会で料理を担当。2017年には農林水産省から日本食普及の親善大使に任命され、「和食」を世界に伝える代表的な人物といえる。

 ひと言で「和食」といっても、それぞれの土地でスタイルは異なる。「銭屋」では、京風と江戸風が融合した「加賀料理」を提供。2016年にミュシュラン二つ星を獲得し、海外からの来訪も多い。

 田中さんがアメリカからの友人と「銭屋」で食事をした時のこと。高木さんは、お皿から料理に至るまで、英語ですべて説明。料理も友人が食べやすい工夫をしてくれ、異文化のギャップを言語(英語)と心遣いでおもてなしをしてくれた。高木さんの加賀料理を楽しんでもらいたいという“心まで満たす演出”に言葉がでなかったそうだ。

 近年、インターネットや口コミサイト、SNSからの情報により、日本人には思いもよらない場所がインバウンドに結びつく可能性がある。英語を使った“おもてなし”は、日本全体で求められるスキルなのかもしれない。

(取材・文/柏野裕美)

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