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2018年02月23日 08時40分

「辛い時代でもある」ソフィア・コッポラ、SNS時代の批判との向き合い方

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』を手がたソフィア・コッポラ監督(写真:ホンマタカシ) [拡大する]

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』を手がたソフィア・コッポラ監督(写真:ホンマタカシ)

 映画『ロスト・イン・トランスレーション』や『SOMEWHERE』で知られるソフィア・コッポラ監督が、初めて手がけたスリラー作『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』が公開された。カンヌ国際映画祭の監督賞を受賞した本作だが、その根底には日本の文化の影響も。巨匠を父に持つコッポラ・ファミリーの一員としての葛藤、さらに米国メディアやSNSから発信された批判に対する考えも語った。

◆貞淑な顔の下にある感情がむき出しに、描かれた「女あるある」

――原作は小説ですが、映画化しようと思った理由は?
【ソフィア・コッポラ】舞台が南北戦争時代でありならが、そこで繰り広げられる男女関係は普遍的なもので、現代の男女にも共通することに惹かれました。まず、年代の違う7人の女性の中に男性が1人という状況。この中で、それぞれがその年代なりの献身、慈愛、嫉妬、欲望などの感情…貞淑な顔の下にある“女”をむき出しにしていくんです。そんな彼女たちの姿は、観ている方たちにとっても“女あるある”でしょう?(笑)。

――オープニングの映像は、黒澤明監督の『羅生門』にインスパイアされたものだそうですが、黒澤監督とも親交の深い父、フランシス・フォード・コッポラ監督の影響ですか?
【ソフィア・コッポラ】そうかもしれません。私は、7歳か8歳の頃にクリスマス旅行で初めて家族揃って日本に来ました。当時の日本には、アメリカで売っていなかったモンチッチがあって、「カワイイ!」って(笑)。そこからずっと日本が好きですね。20代になって再来日した時には、アメリカでは流行っていなかったガーリーカルチャーが盛んで、即、魅了されました。日本は、伝統的なエレガンスとポップでキュートなものが見事に共存している。私は、その両極端ともいえる2つの文化が大好きなんです。

◆コッポラ・ファミリーの一員として「恩恵を受けるがゆえに厳しい評価も」

――これまで長編6作を監督していますが、『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)でアカデミー脚本賞、『SOMEWHERE』(2010年)ではベネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞。今作では、カンヌ国際映画祭の監督賞を受賞されました。6作のうち、実に3作がこのような権威ある賞を受賞しているわけで、5割打者という好成績はものすごいです。
【ソフィア・コッポラ】そう褒めていただけるのは、本当に嬉しいです。もちろん、私がここにいられるのは、コッポラ・ファミリーの一員である恩恵もあるという自覚はあります。でも、その一方で恩恵を受けるがゆえに厳しい評価も受けてきましたから。私としては、そういうプラスとマイナスの境遇を受け入れて、なにより自分らしい作品を作っていくことに専念してきました。ですから、作品に対して評価をいただくことは本当に嬉しいことなのです。

◆ポリティカル・コネクトネスへの持論、「アーティストにとって地獄の苦しみ」

――世界中で評判の良い本作でも、アメリカのメディアからはちょっとした批判が寄せられました。
【ソフィア・コッポラ】その多くが「南北時代が舞台なのに黒人の奴隷が出てこない。なんたることだ!」ということでした。でも、あそこに奴隷が出てきたら、まったく別の映画になってしまう。だから私としては、今作には必要ないと思ったのです。いま、アメリカは政治的な正しさを求める傾向にあります。でも正直、「これはやってはダメ」「これはやらなければいけない」と規制されるのは、アーティストにとって地獄の苦しみ。辛い時代です。『ブリングリング』(2013年)でもその危険性を描きましたが、現代はSNSなどを通してみんなが簡単に批判できる。それによってアーティストの表現が制限されてしまうのは、本当に危険なことだと痛感しています。

――そんな批判を吹き飛ばすほどの高い評価を得た本作を、たった26日間の撮影で撮ったと。
【ソフィア・コッポラ】正直、もっと時間が欲しかった。でも最初に決めたバジェット(予算)がどんどん削られて選択の余地がなかった。最終的にはその少ない予算の中で、限られた時間で撮るために、入念な準備を重ねて。何が何でも、やるっきゃなかったの(苦笑)。

――アカデミー賞もベネチア映画祭も制した監督でも、バジェットを削られるとは。
【ソフィア・コッポラ】も、ビックリよ(笑)。全部とは言わないけれど、だいたいの映画スタジオはバジェットを削ってくるものなの。その中でも今回はとくに削られまくって、本当に大変だった。とはいえ、今回は初めてスリラーのジャンルに挑戦もできた。私の本質は何も変わっていないけれど、これまで積んできた経験をフルに生かして、映像美がうまく出せるようになったり、キャストとの関係がうまく築けるようにもなったと思います。私は製作費の計算とか、ビジネス的なことにはまったく疎いのですが、それでもいろいろな経験をしてこそ、監督としてもワザも磨かれるのだと思いました。そういった意味でも、今回は大きなチャレンジでしたね。
(文:金子裕子)

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