Q.早すぎる英語教育は、子どもに日本語力が身に付かない?

まだ日本語も完璧に話せない幼い子どもに英語を習わせてしまうと“ダブル・リミテッド”といった問題が起きると聞きました。どのような問題なのでしょうか? 早すぎる英語教育は、子どもにとって母国語である日本語力が身に付かないのでしょうか?
【A】年齢相応の言語能力に達しない状態は回避しましょう

 海外赴任が決まったときに「うちの子もバイリンガルになるかも」と期待される方もいらっしゃるかもしれません。ただそこには、「多重言語=ダブル・リミテッド(セミリンガル)」といった現状があるのも事実です。

 ダブル・リミテッド(セミリンガル)とは、母国語を習得しないまま外国語を習った場合に、どの言語も年齢相応の言語能力のレベルに達しない状態のことをいいます。脳の言語中枢が形成される8歳から10歳頃に母国語の基盤をしっかり作ることで、論理的思考が可能になるといった仮説をもとに作られた言葉です。

 親の海外赴任に伴って英語圏などで生活することになった場合には、現地で土曜日の日本人補習校や公文式などの塾に通ったり、日本人家庭教師を雇ったりして、幼児期から正しい日本語教育を行うよう努力されているご家庭が多いのも事実です。

 一方、フランス人と結婚した私の友人の場合、子どもと会話する際に、父親は必ずフランス語、母親は必ず日本語で話すことを徹底した結果、見事なバイリンガルに育ちました。現在フランス在住のその子どもは、日本の歴史本を読み、日本文化にも精通。こういった良い例があるのも事実です。

 また、幼児期に獲得した母国語をその後全く使用されなければ、第二言語が第一言語に置き換わる現象も報告されています。幼い子どもに外国語を教えるのが問題なのではなく、どちらも中途半端に学ぶのがよくないかもしれませんね。
One more アドバイス
思想や表現の幅を広げる意味でも母国語である日本語をしっかり学べる環境を準備したうえで、第二言語となる英語を習得できるようにしましょう。
>週1回の英会話スクールで、本当に子どもは話せるようになる?
>小学校で英語が必修教科になったら、英会話スクールは必須ですか?
【文・取材/寺本亜紀】
ライター、映像翻訳者(映画やドラマ、ドキュメンタリーの字幕翻訳・吹替翻訳)。英文科卒業。
小学校英語指導者資格取得。カナダ、アメリカ、オーストラリアで親子留学を経験。
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