大学生がアジアの村でイノベーション! アツい海外滞在記〜金沢工業大学〜

 海外留学といえば欧米、というイメージが強い中、 アジアの学生と多国籍チームを組み、インドネシアの村での共同生活の中で革新的な解決策を次々に生み出している金沢工業大学の「ラーニングエクスプレス」にクローズアップ! これからの日本にとって必要な人材はここから生まれる。プロジェクトを体験した学生たちの、アツいエピソードを紹介します!

 「ラーニングエクスプレス」は技術者教育の世界標準である「CDIO」(Conceive、Design、Implement、Operate)加盟校のシンガポール理工学院、金沢工業大学、金沢高専の3校が協働して行う国際的なソーシャルイノベーションプロジェクト。異分野・異文化背景を持つ学生たちが集まり、途上国や地域で現地の人とのコミュニケーションを通じて課題を発見。学生たちの知識や技術を生かし、現地の調達可能なものを活用した革新的な課題解決策を現地の方々と共に創り出していくというもの。村人(ユーザー)の立場になって、何が必要とされているのかを考え、現地で入手できる技術、素材でイノベーションをおこす。2013年にプロジェクトがスタートして、これまで12名の学生が体験しているという。
英語が話せない…。ある特技でピンチがチャンスに
 「お風呂でお湯が出ないことや虫の多さには、1週間で慣れました」と語るのは、インドネシアで行われたプログラムに参加した神保さん。以前にも東南アジアに行ったことがあり、現地の生活環境にはすぐに適応することができたそうですが、英語でのコミュニケーションにはひと苦労。現地の人が話す英語は独特のなまりがあり、最初はほとんど理解することができませんでした。プロトタイプを創るためのグループの議論にも、うまく加わることができません。

 「相手に自分の考えを伝える手段は言葉だけじゃない」。神保さんは悩んだ末に、得意の絵を使うことを思いつきました。積極的に絵を使って意見を発信し始めると、仲間からの信頼も勝ち取ることができたそうです。グループワークではポスターの制作を中心に、チームに貢献しました。「辛いこともありましたが、グループのメンバーと一緒に乗り越えたので、絆を深めることができました。英語はもっと勉強しなければと思いましたが、コミュニケーションには様々な手段があるのだなと実感しました」。

自転車の動力を活用した「産業革命」!?
 実際に現地で生活をする中で、地元の課題を解決していくのが「ラーニングエクスプレス」の大きなテーマのひとつ。杉本さんが参加したグループは、積極的にインタビューを行うことで見事に村の課題をクリアしました。杉本さんが滞在したインドネシアの村では、各家庭が竹で家具を作り生計を立てていました。主産業の家具製作ですが、手作りのため一日にひとつ作るのがやっとの状況で、村人たちの収入はわずかです。課題解決のために杉本さんのチームが目を付けたのが、「竹を切る作業」。家具作りのプロセスの中で何度も行われるこの工程を楽にできれば、手作りでももっと数を作れるはずだと仮説を立てました。

 工学部の杉本さんにとって、竹を切る機械を考えること自体は簡単です。しかし、発展途上国の村で持続的に使える動力を確保しなければ意味がありません。グループのインドネシア、シンガポールの学生たちと議論をしていく中で、杉本さんはあることに気付きました。「村を見て回っていた時に、自転車が広く普及していて、どこでも使われていたんです。これなら村の人たちみんなが使えると思いました」。自転車を動力としたプロトタイプの製作に取りかかり、完成した機械は仕事のやり方そのものを大きく変えました。「村の人たちは外国人が珍しいので不思議そうに見られることもありましたが、彼らにたくさんインタビューして話を聞いたことで、今回のプロトタイプを製作することができました」と杉本さんはプロジェクト成功の秘訣を話してくれました。

意識高!!会話が途切れることのない!?
 島崎くんが参加したグループは、手作りの扇子で生計を立てている村でした。扇子の骨組みと布を貼り合わせる際に、彼らは糊を指で塗っており作業者の何名かの手が荒れてしまっている状態でした。それを解決するために何ができるのかを意見交換する場で、日本では中々味わえない創造の場を体験しました。「シンガポールとインドネシアの学生達が活動に取り組む姿勢に驚きました。話し合いをする際に、話が途切れることがないくらい意見交換が繰り返されるんです」。学習意欲の低下が問題とされる日本の学生にとって、彼らの活動に取り組む姿勢からは学ぶことが多く、良い刺激となったようです。

 しかし、英語が完璧に話せなかった島アくんは、途中で話し合いについていけないことが何度もあり、大変苦戦を強いられることになりましたが、それを解決してくれたのも海外の学生でした。「海外の学生たちが言語の壁に苦戦している私達を見て、今はこんな話をしているよと教えてくれて、私たちの意見も取り入れようとしてくれました」。海外で現地の人や他国の学生と密にコミュニケーションを取ることで、海外での活動も進路の一つとして興味を持つ島崎くんにとっては、自分の課題を再認識する貴重な体験になったようです。

 これまでに「ラーニングエクスプレス」を引率してきた金沢工業大学の基礎実技教育課程 坂本宗明准教授は、参加した学生たちの変化についてこう説明します。「ユーザーの立場になって何を解決するべきかを考えるデザインシンキングを用いた課題発見、解決の過程で、自分の専門をより深めることが重要だと気付いた学生が多かったです。その他にもコミュニケーションやフレンドシップ、プレゼンテーションなど、実社会でのプロジェクトに他国の学生と挑戦したことで、大学で学んだ知識や技術、語学力をいかに応用して活動しなければならないかを実感してくれています」。

 異文化を背景に持つ仲間と協力しながら、大学で学んだ専門分野を生かして実生活の課題を解決していくという同大の画期的なプログラム。座学だけでは決して得られない、リアルな「学びの場」での経験は、きっと社会に出ても役立つことでしょう!
 技術者教育の世界標準「CDIO」を国内の大学で初めて導入したり、世界最高峰の研究開発機関・SRIと共同して「イノベーション力」教育を実施するなど、グローバルな人材育成に力を入れている大学。工学部、情報フロンティア学部、環境・建築学部、バイオ・化学部の全4学部計14学科には全国から学生たちが集結しており、在学生の75%が石川県外出身者。メインとなる扇が丘キャンパスは街中に立地していて、その利便性の良さもポイントとなっている。

石川県野々市市扇が丘7-1(扇が丘キャンパス)
(取材協力:金沢工業大学)
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